泣き崩れた男の人。わーーーーーーーわーーーーーーと叫んでいました。
まるでドラマのように。
すやすやと眠る小さな赤ちゃんの横に、意識不明、こん睡状態のお母さんが、朝の分娩室に。
妊娠とは、貧血傾向になりやすく、分娩は出血を伴います。
一説には男性がそれぐらいの出血をしたら死んでしまうかもしれないぐらいの出血をしても女性は生き抜くとか。
マラリア、デング熱にかかっていた彼女。
どちらの病気も貧血を助長し、出血をとめる力も失います。
来たときには、鼻、耳、口からも出血。
口角からは泡をふき、瞳孔は散大。
意識はもちろんなく、呼吸はいびきのよう。
なけなしの輸血と、限界のある鼻からの酸素投与。
その酸素ボンベだってちゃんと動いているのやらどうやら。
何もしようがないこの病院にいても仕方がない。
車の工面、人の工面、医師が来るまで待っての診察、そんなこんなで朝方5時にきた彼女が、大学病院に向け出発しのは朝の10時を過ぎていました。
ここから、あぜ道を3時間半かかるというのに。
酸素もなく、向かいます。
誰もが信じて祈っていたのだろうけど、でもこの後回復することはないというのに。
妊婦健診を受けようと思わなかったかもしれない、受けていたかもしれない、そんなのあるって知らなかったかも。
健診したって、何かあって搬送されてくるのに何時間もかかる。
1台しかない救急車が出払っていたら、4輪なんて持ってない、バイクすら持ってない人は誰に頼む?
マラリアやデングにかかろうとしてるわけじゃないけど、蚊はたくさんいる。
扇風機がないところで、戸をあけないと暑い。
網戸をはるようなお金がないとしたら。
水道がなければ、井戸から汲んだ水を張って貯めておくしかない。
蚊が増殖しようが、蚊取り線香をいちいち24時間つけておく知識もお金もないかも。
虫よけを一本買うお金で、きっとじゃがいも1カ月分は買える。
蚊帳で寝る贅沢。
一人に一つベッドがある贅沢。
自分の家だけよくたって、道路はでこぼこ、水はたまる。
そして病気になったところで、受診行動をとれるのか。
お産とそういうことが結びつくってことをどこで知ればいいのか。
搬送されてきたって、何もない。
人もない、モノもない。
そこからさらに行くまちに、誰が、どうやってついていき、誰がお金を出し、誰が道中見守れる?
助かったところで、大学病院に持続的なお金、払えるの?
何が原因で、彼女は死ぬの?
医療の不備?貧困?道路の不備?教育?慣習?
どれか一つ、いや全部解決すればそこが世界平和のゴールですか?
そういうこと、現地に来る前に、”国際協力ってなんだろう”って、よくそういう仲間でセミナー開いたり語り合ったりしたな、って思いだしました。
そう、実際、医療ができることなんて、ほんの一握り。
でも医療 ”も” ないとダメなんです。
なぜ事が思うように運ぶ場所や国は、なぜ事が思うように運ぶのか?
気付かないところで、気にもとめないところがちゃんと整っているからだと思います。
”マラリアやデングは、蚊で感染しちゃうんだよ”ってもし日本の町に書いてあったら、日本人なら誰でも読める。
たとえば、そういうこと。
決して取り乱すようなことを、なかなかしないインド人。
そんな中でも男の人が叫び号泣する姿みているのは、とても直視できませんでした。
私と同い年、28歳のお母さんでした。
初めての子を横に。
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